イギリス離脱(BREXIT)に伴う欧州連合商標(EUTM)の取り扱いの最新動向

[イギリスがEUに離脱を通知]

 2017329日に、イギリスが欧州連合(EU)に対して離脱を正式に通告し、離脱交渉の手続きがスタートしました。離脱交渉の期間は2年間であり、その間に欧州連合商標(EUTM)のイギリスへの保護の取り扱いに関しても交渉が進められます。

[EUTMによるイギリスへの保護の現状]

 現時点(20174月)では、EUTMによるイギリスへの保護は及んでいる状況であり、今までの取り扱いと何ら変わることはありません。

[EUTMによるイギリスの保護の今後]

 イギリスが実際にEUを離脱する時、EUTMで及んでいたイギリスへの保護をどのようにするかは、既に議論は始まっており、複数のシナリオが考えられています。その中でも、以下のオプションが有力とされているようです。

① イギリスがEUを離脱した場合、EUTMの保護はイギリスに一切及ばなくなる。イギリスへの商標の保護を求めるのであれば、新たにイギリスに直接手続きをして登録を得るか、マドプロ商標で新たにイギリスを指定する。

② イギリスがEUを離脱した場合、EUTMの保護はイギリスに及ばなくなり、イギリスかマドプロでの出願が必要になるのは①と同じ。しかし、EU離脱時に有効なEUTMを所有している場合、優先権(priority)が与えられる。

③ イギリスとEUの間で合意が結ばれ、イギリスが離脱しても、EUTMの効力はイギリスに継続して及ぶようになる。

上記の中で、③に関しては除外されるであろうという意見が有力です。イギリスはEUを離脱しようとしており、EUと意見を合わせて制度を引き継ぐことはないであろうと考えられています。  

そうすると、最も可能性が高いのが②であり、混乱や紛争を避けられる最善の方法と考えられています。ただ、②の方法が必ず選ばれるとは限らず、万が一①のような方法が選ばれたとき、所有されている商標の登録をイギリスで取得できなくなるおそれもあります。このようなことから、一部のイギリスの代理人は、イギリスにおいて権利を確保することが非常に重要である商標の場合は、早期にイギリスへの直接出願、またはマドプロ商標によるイギリス指定を行っておくべきという意見もあります。

  今回のイギリスのEU離脱により、今まで享受してきたイギリスの商標権が単に失われるだけでは、権利者にとって不利益にしかなりません。イギリスの商標代理人協会は、起き得る混乱を避けるべく、費用と手間を小さく、そして法的な確実性の高い策を模索し、今後の交渉に臨む姿勢です。

最終的にEUのイギリスに関する商標権が失われる事態になったとしても、イギリスにおいて出願を行うことなく簡素な手続きでEUTM登録時からの権利が維持できる方法、または、少なくともEUTMの権利の存続期間満了まではイギリスにおいてEUTM商標の権利が及ぶ方法等、様々な救済策が練られるべきと、筆者は願って止みません。今後とも本問題の動向を注視していきます。

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