不使用取消審判 立証問題①

Post date: 2017/01/27 2:44:17

不使用取消審判を請求させる度に思うことなのですが、答弁書を書いた直後でないともう切実な問題ではなくなるのか、書こうとしないので、今日は書きましょう。

不使用取消審判では、挙証責任の転換がされています。審判を請求する側ではなくて、審判を請求された側が、商標を使用していることを証明するという証明責任です。

確かに、商標を使用していないことを証明するのは難しいことだと思います。

商標の調査で、同一・類似の商標がある、ということは容易に言えるのです。登録番号xxx番の登録がありますよ、と言えるからです。でも類似する商標がありません、と言うには、登録番号xxx番とは類似しない、とは言えても、もっと他に存在しないの?と言われたら、証明のしようがないのです。そこで「私の調査した、これこれの範囲内にはありません。」と言うしかないのです。

使用をしてない証明も同じで、東京都では使っていないと言えても、では大阪では使っていないの?奄美大島では?という疑問は出るのです。

そこで、使用している本人は、使用していることを知っているのだから、容易に証明できるのだから、立証責任を転換してしまえ、というのが現行法です。

ここからが問題なのです。「使用している本人だから、使用していることを知っている。」は当然です。しかし、それを立証する、というのはやはり難しいことなのです。

まず、商品が同一性の範囲内にあるか、が問題です。K25「靴類」に権利を持っていたと仮定して、「げた」に使用していたのではダメですか?「テニスシューズ」ではダメですか?「ジョギングシューズ」では?

では権利がK25「履物」であったら、「ゲタ」と「テニスシューズ」では助かりますか?

次は、商標が同一性の範囲内にあるかどうかの問題です。「いろは」という権利で、「イロハ」と使っていたらどうですか?「i ro ha」ならどうですか?「i ro は」なら?

「どん兵衛」という商標を「どん」「兵衛」と2列に書いて使用していたらどうですか?

この問いにスラスラ答えられる人が居たら、僕がスカウトします。

どうして、権利者が商標の使用を証明するのが簡単だと言えるのでしょうか?

まだ、要件はあります。不使用取消審判の予告登録がされた時の前3年以内に使用していたことを証明せよ、というのです。不使用取消審判の請求書を受け取って、「今の今使ってますよ。」と店の商品棚の写真を撮って、「3年前だって使ってましたよ。店を始めたのは5年前なんだから。」と言ってもダメなのです。「証明できていない。」と審決では言われます。これが現在の審判の状況です。

今日の証明書では、予告登録が2008年7月29日で、こちらの見積書の日付が2005年5月16日です。「納期は別途打ち合わせ、支払条件は納品後2ヶ月、見積書の有効期間は3ヶ月。」と見積書に書いてあります。この見積書で、予告登録前3年の間(2005年7月30日~2008年7月29日)の使用が証明できたと、あなたは判断しますか?

おそらく、あなたが特許事務所の担当者なら「心配だから、もっと最近の見積書をください。」と依頼者に言うはずです。そして依頼者は、また別の見積書を探さなくてはならないのです。どうして、証明が簡単だと言うのですか?

僕が日ごろ主張していることを書きます。

権利者側の証明は、「証明」ではなくて、「疎明」で十分とすべきです。その提出された証拠が疑わしい時だけ、更に証明を求めることができる、というので十分ではないか、と。

また、犯罪の立証側に対して、被告は合理的な疑問を差し挟めれば良い、という被告側の立証で十分とすべきです。アリバイ(不在証明)の程度で十分と。

それでなくては、請求人と被請求人の衡平は保てないと僕は思っています。

「2列に書いた『どん』と『兵衛』では、一列に書いた『どん兵衛』の使用とは言えませんから、別の証拠を出してください。」と審判官が被請求人に通知するというので何か問題がありますか?審尋とか、求釈明という位置付けで良いと思います。

現行法とは違うことを考えていますが、こんな風に考えています、というのをお見せしたくて。

そういう変なことを考えている人には、「俺の仕事は依頼できない。」と考えられてしまうと不味いので、このニュースはなかったことにしてもらって...。

文責 広瀬