商品と役務

Post date: 2017/01/27 2:51:34

面白い、けれど難しい質問を受けました。皆さんにもNewsでお裾分け。

「既製品の洋服」(つるし)と「イージー・オーダー」と「仕立て」の関係です。既製品の洋服は(K25 17A01)で、お店で商品を見て選んで買います。「商品」を買います。だから商品商標(商標法第2条第1項第1号)です。これに対して、「お仕立て」は、布を用意して仕立屋さんに出向き「縫ってください。」と頼みます。仕立屋さんの提供するのは行為(役務)(K40 40B01)です。だから、仕立屋さんのお店に出てる看板は「役務商標」(同法第2条第1項第2号)です。

※注 国際分類をK25等、類似群コードを17A01等と表示しています。

さて、「イージー・オーダー」はどうでしょう。「この商品をください。でも袖を少し詰めてね。」(僕の場合は、ズボンの裾を極度に詰めて、胴周りを出してもらうということになりますが。トホホ。)と頼むのは、商品の販売に付随するサービスです。裾上げも付属する役務です(有料の場合も含めて)。

デパートで買い物した商品の無料のお届けは、付随するサービスです。独立した役務商標の対象ではありません。有料で届けてくれる場合もほぼ同じです。買った商品の値段と送料がリンクするというのは、その表れです(商品代価が1万円以上は無料、それ以下は有料、というような。)反対に、お店で、宅配便の紙に書き込んで渡すという場合には、宅配という役務(役務商標の対象)のお手伝いをお店がしている、と言えます。伊豆下田の干物屋さんでは、そうしてくれます。

洋服の形は決まっていて、生地を選ぶのと、ズボンのタックをシングルにするかどうかズボンを2本付けるかを選択する程度の「イージー・オーダー」も商品の販売に近いと思います。対価の額の対比も考慮されます。

「対価の額の対比も考慮されます。」と書いてから、ものすごく高い生地を買って仕立ててもらうと仕立料は相対的に安くなり、安い生地を仕立ててもらうと仕立料は高くなります。でも一般的には対比を考えます。

その場で生地を買って、仕立てを頼むのは、生地(商品)の販売と、仕立の役務の複合と考えた方が良いですね。

お仕立券付きのワイシャツ生地は、役務で考えるべきでしょうか。どうもお仕立てする方に重点があると思います。

判子の石を選んで彫ってもらうのは、彫ることが中心なのですが、これは商品の販売と考えます。石の販売を判子屋さん(彫る人)しかしていないからでしょうか。

指輪を指に合わせるのは、商品の販売に付随する役務です。

では生簀の魚を選んでその場で料理してもらって食べるのは?魚(商品)の販売と料理の提供(役務)との複合と考える?こちらは飲食物の提供(役務)の中に含まれている気がします。イカを握ってもらうか、トロを握ってもらうか選ぶのとあまり変わりがない、と言えるでしょう。

食べ物は、お持ち帰りだと「商品」、お店で食べさせるのは「役務」と説明しています。ハーゲンダッツを店先にたむろして食べるのは「商品」です。

フードコートのように食べる場所が用意されていても、「商品」と考えたい。店内で食べるというよりはお持ち帰りに近いと思います。

それよりも、今回の問題は難しいですね。

お菓子の話もありました。注文を受けてウエディングケーキを作るというような。乗せる人形とデコレーションの花が違う程度と思っていたら、その程度ではない、と。注文者と会って、そもそもの馴れ初めを聞いたりして、そのイメージをケーキに表現する、とか。

特許庁のJ-plat-patの商品・役務リストでは「注文に応じたお菓子・パンの製造」がK40 40C09に分類されると書いてありました。でも、40C09は、元々「食料品の加工」です。これは、お米を持ち込んで「精米」してもらうとか、「製粉」とか「サトウキビから砂糖を作る」というのが本来の意味ではないでしょうか。そう、「お菓子の製造」ですね、「製作」ではないですね。1品のウエディングケーキは「製造」ではないですよね。まぁ、批判はともかく、そういう分類が掲載されています。

普通の製粉会社は、自分で原料を買ってきて自分で粉にします。そして粉という「商品」を売るということになります。

住宅に関しては「注文住宅の建設」というのがJ-plat-pat に掲載されていましたが、こちらは元々の建築工事一式(37A01)の概念の中に含まれていると考えて良いと思います。建築条件付きの土地の売買は、K36D01(土地の売買)とK37A01(建築一式工事)との複合ですね。

「入れ歯」は、治療の一環だからでしょうか。「入れ歯の作成」という役務は審査基準のリストには掲載されていません。でも歯医者さんは、歯科技工士さんに歯を作るのを注文していますね。でもあれは、歯を作る一部を技工士さんに出しているだけでしょうか。技工士さんは歯科医の手足でしょうか?技工士さんが商標を取りたいと言ったらどうしましょう。商標はどこに表示しましょうか?

さて、商品「かつら」はどうでしょう。既製品でポッと被れば良いものもあれば、頭の形を取って、かつら生地の形をつくるオーダーメードで、自毛となじませる調髪をするのもあります。さて。

文責:広瀬