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イギリス離脱(BREXIT)に伴う欧州連合商標(EUTM)の取り扱いの最新動向

2017/04/06 21:48 に 綾子藤本 が投稿   [ 2017/04/06 22:03 に更新しました ]

[イギリスがEUに離脱を通知]

 2017329日に、イギリスが欧州連合(EU)に対して離脱を正式に通告し、離脱交渉の手続きがスタートしました。離脱交渉の期間は2年間であり、その間に欧州連合商標(EUTM)のイギリスへの保護の取り扱いに関しても交渉が進められます。

 [EUTMによるイギリスへの保護の現状]

 現時点(20174月)では、EUTMによるイギリスへの保護は及んでいる状況であり、今までの取り扱いと何ら変わることはありません。

 [EUTMによるイギリスの保護の今後]

 イギリスが実際にEUを離脱する時、EUTMで及んでいたイギリスへの保護をどのようにするかは、既に議論は始まっており、複数のシナリオが考えられています。その中でも、以下のオプションが有力とされているようです。

① イギリスがEUを離脱した場合、EUTMの保護はイギリスに一切及ばなくなる。イギリスへの商標の保護を求めるのであれば、新たにイギリスに直接手続きをして登録を得るか、マドプロ商標で新たにイギリスを指定する。

② イギリスがEUを離脱した場合、EUTMの保護はイギリスに及ばなくなり、イギリスかマドプロでの出願が必要になるのは①と同じ。しかし、EU離脱時に有効なEUTMを所有している場合、優先権(priority)が与えられる。

③ イギリスとEUの間で合意が結ばれ、イギリスが離脱しても、EUTMの効力はイギリスに継続して及ぶようになる。

上記の中で、③に関しては除外されるであろうという意見が有力です。イギリスはEUを離脱しようとしており、EUと意見を合わせて制度を引き継ぐことはないであろうと考えられています。  

そうすると、最も可能性が高いのが②であり、混乱や紛争を避けられる最善の方法と考えられています。ただ、②の方法が必ず選ばれるとは限らず、万が一①のような方法が選ばれたとき、所有されている商標の登録をイギリスで取得できなくなるおそれもあります。このようなことから、一部のイギリスの代理人は、イギリスにおいて権利を確保することが非常に重要である商標の場合は、早期にイギリスへの直接出願、またはマドプロ商標によるイギリス指定を行っておくべきという意見もあります。

  今回のイギリスのEU離脱により、今まで享受してきたイギリスの商標権が単に失われるだけでは、権利者にとって不利益にしかなりません。イギリスの商標代理人協会は、起き得る混乱を避けるべく、費用と手間を小さく、そして法的な確実性の高い策を模索し、今後の交渉に臨む姿勢です。

最終的にEUのイギリスに関する商標権が失われる事態になったとしても、イギリスにおいて出願を行うことなく簡素な手続きでEUTM登録時からの権利が維持できる方法、または、少なくともEUTMの権利の存続期間満了まではイギリスにおいてEUTM商標の権利が及ぶ方法等、様々な救済策が練られるべきと、筆者は願って止みません。今後とも本問題の動向を注視していきます。

マドリッドプロトコルによる出願 (通称:マドプロ)

2017/01/26 18:35 に 綾子藤本 が投稿   [ 2017/01/26 19:08 に更新しました ]


正式名称

標章の国際登録に関するマドリッド協定の1989627日にマドリッドで採択された議定書

概要

締約国の官庁に商標出願をしたか、商標登録を受けた者は、その出願または登録を基礎として保護を求める締約国を指定し、本国の官庁を通じて国際事務局に国際出願をし、国際登録を受けることにより、指定した締約国(指定国)において、商標の保護を受けることができる制度。

締約国

現在98か国で、主要な国は殆ど締約国(2017/01現在)。(加盟していない主な国:カナダ、台湾、香港、インドネシア、タイ、マレーシア等)

出願の条件

マドプロ出願をするには、本国で商標出願しているか、商標登録を受けていることが必要。国際登録日(国際出願日と原則同じ)から5年は、本国商標と運命を共にする。すなわち、本国商標登録(出願の拒絶・無効が確定すると、国際登録も消滅する。また、指定商品・役務を減縮すると、国際登録の指定商品・役務も減縮される(セントラルアタック)。

出願

本国登録と商標が同一でなければならない。指定商品・役務は、本国商標の指定商品・役務の範囲内であれば、変更可能。一出願多区分出願が可能。

国際出願の効果

一出願で複数の指定国に出願したのと同等の効果を得る。国際出願日は、原則国際登録日となる。

審査

出願した本国官庁では、方式審査を行う。

国際事務局では、分類と商品・役務表記を審査。欠陥通報が出される。欠陥がなければ、国際登録される。

国際登録がされた後、各指定国で識別性、先行商標の有無の審査を行う(審査国)。

各指定国は領域指定の通報から12ヶ月以内(又は18ヶ月以内)に拒絶の通報を国際事務局に行う。拒絶の通報がない限り、保護が与えられたものとされる。
登録の可否判断は、各指定国が独自に行う(商標独立の原則)。

拒絶の通報は、国際事務局から出願人に通知されるが、出願人は、国際事務局ではなく、拒絶の通報のあった指定国の代理人を通して指定国の官庁に応答する。
拒絶の通報がない場合は、保護が与えられたものとされる。登録の通知は行う国と行わない国がある。

更新

存続期間は、国際登録日から10年。更新手続きは、国際事務局に対して行う。本国官庁が日本の特許庁の場合は、日本特許庁を通じて更新申請をすることができる。存続期間満了の6ヶ月前に、国際事務局から権利者および代理人に通知が来る。実際の手続きができるのは存続期間満了日の3ヵ月前から。更新されると、国際事務局から各指定国に通知が送られる。

保護対象となる商標

保護対象となる商標は、普通商標の他に立体商標、音響商標等があるが、保護対象となるかは各指定国法制による。

事後指定

  国際出願が国際登録された後でも、指定国を追加することができる。この制度を事後指定という。ただし、国際登録の指定商品・役務の範囲内のものしか指定できない。
  事後指定の提出先は、国際事務局又は日本特許庁である。指定国において出願の効果が生じるのは、事後指定日。ただし、存続期間の起算日は、事後指定の日ではなく国際登録日となる。

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